目次
1. 業界分析とは
業界とは、マイケル・ポーター[1982]によれば「互いに代替可能な製品を作っている会社の集団」と定義されています。
業界分析を行う項目としては、一般的には、規模、構造、トレンド、流通チャネル、コスト構造、法規制などが挙げられます。
なかでも業界の収益性、言い換えると業界の魅力度は、業界構造によって左右されることになります。
ポーター[1982]によれば、「競争戦略を策定する際、もっとも重要なのは企業をその環境との関係で捉えること」であり、「その環境として大切なのは、その企業がいる業界の定義とその構造」であるとしています。
その業界構造を分析するための枠組みとして、ポーター[1982]による、5つの力(ファイブフォース:5 Forces)分析がよく用いられます。
2. 5つの力(ファイブフォース:5 Forces)分析とは
ポーター[1982]によって提唱された業界構造を分析するための枠組みです。
次のような5つの視点から構成されます。
これら5つは「広義の敵対関係」とも呼ばれ、業界内の競合のみでなく、これら5つのすべてが競争対象となります。
このことから、ポーターによるこの5つの力は、業界の収益性を予想することができます。
2.1 業界内の競合他社(既存の競合)との敵対関係の強さ
業界内の競合との競争の激しさのことであり、狭義の競争関係です。
規模が同様となる競合他社が多いほど、業界の成長が鈍化しているほど、また固定費の割合が大きい業界ほど、敵対関係は強くなります。
また、撤退障壁が高い、すなわち撤退するのが困難な業界では、競争が激しくなると収まりにくいといえます。
設備投資を行った後にその設備を他の用途に転用できないような装置型産業などはその典型例です。
このような業界は、合併と合理化を重ねることで生き残りを目指したり、カルテルなどで守られたりする例が多いです。
2.2 新規参入の脅威
業界への新規参入の脅威のことです。
新規参入の恐れの大きさによって業界の競争状態は左右され、新規参入の恐れが大きいほど競争が激しくなります。
新規参入の恐れの大きさは、参入障壁の高さによって決まります。
参入障壁が低い業界では、仮に業界の収益性が向上したとしても、新規参入により競合企業が容易に増えてしまい、すぐに収益性が低下してしまいがちです。
参入障壁としては、技術的要素、設備投資、マーケティングなどの障壁があります。
このほかに海外企業の参入も大きな脅威として考えられます。
また、新規参入は業界の競争のルールの変化をもたらすことがあり、業界内の既存の競合にも影響を及ぼします。
2.3 代替品の脅威
代替品とは、業界の現状の製品以外の新製品で顧客のニーズを満たすようなものであり、これにより現状製品が置き換わってしまうような脅威のことです。
現状製品よりもコストパフォーマンスの高い代替製品が現れる恐れが大きいほど、業界に対するプレッシャーは大きくなります。
2.4 買い手の交渉力
業界にとっての顧客のことです。
買い手の交渉力が大きい場合、売り手である業界は低価格での販売や値引きを要求され、業界の収益を圧迫することになります。
差別化が困難な製品(汎用部品など)を扱う業界では、買い手の判断基準が価格と納期のみになってしまい、過当競争に陥る傾向があります。
2.5 売り手の交渉力
業界にとってのサプライヤー(原材料や部品などの供給業者)のことです。
売り手の交渉力が大きい場合、買い手である業界は高価格で調達せざるをえなくなり、業界の収益を圧迫することになります。
売り手の交渉力が大きい場合とは、売り手の業界が独占的な技術を有していたり、寡占化されていたりする場合に見受けられます。
3. まとめ
業界とは、マイケル・ポーター[1982]によれば「互いに代替可能な製品を作っている会社の集団」と定義されています。
業界の収益性は、業界構造によって左右されることになります。
その業界構造を分析するための枠組みとして、ポーター[1982]による、5つの力(ファイブフォース:5 Forces)分析がよく用いられます。
5つの力とは、「新規参入の脅威」「業界内の競合他社の敵対関係の強さ」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」のことであり、これら5つは「広義の敵対関係」とも呼ばれ、業界の収益性を左右する要因となります。